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中学受験の理科 · 消化と吸収 · ムービーと実験室

食べ物の一生 中学受験の「消化と吸収」を、おにぎりの旅で

想像のミクロカメラで、口からこう門まで食べ物について行きます。入試に出るところは「入試メモ」に★で出ます。下には★1〜★3の覚えること・確認問題・だ液の実験室。

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このページの使い方

  • 中学受験の理科「消化と吸収」の単元を、このページ一本で。ムービー → ★1 → ★2 → ★3 の順に進みます。
  • ★1 基本:だれでも必ず覚えること。小学校の教科書の範囲です。
  • ★2 標準:塾で習う、消化液・消化酵素・吸収の道すじ。多くの学校の入試は、ここまでで解けます。
  • ★3 難関〜最難関:実験の読み方と「なぜ」。最難関校で差がつくところです。
  • 入試の答えと、研究でわかっている実際がちがうところは、「入試ではこう書く」を先に、「実は」を後に書いています。テストでは入試の書き方で答えましょう。
  • ムービーのカメラは想像のものです。本物のカメラや物は、飲みこまないでね。
★1 基本

★1 基本 ― 必ず覚える7つ

小学校6年の教科書の範囲です。偏差値に関係なく、ここは全員が答えられるようにします。

  1. 1 食べ物の通り道(消化管):口 → 食道 → 胃 → 小腸 → 大腸 → こう門。十二指腸を入れて書く学校もある(十二指腸は小腸の始まり)。
  2. 2 消化:食べ物を、体に吸収されやすい養分に変えること。消化液がはたらく。
  3. 3 だ液は、でんぷんを別のものに変える。ヨウ素液で調べると、だ液を入れた方は色が変わらず(でんぷんがなくなった)、水を入れた方は青むらさき色になる。
  4. 4 胃では、消化液の胃液が出る。
  5. 5 養分は、水といっしょに、おもに小腸で吸収されて血液に入る。
  6. 6 肝臓は、吸収された養分の一部をたくわえ、必要なときに送り出す。
  7. 7 大腸は、おもに水分を吸収し、残ったものを便にする。便はこう門から出る。

確認問題 問題を押すと、答えが出ます。

Q1食べ物の通り道を、口から順に書きましょう。

答え口 → 食道 → 胃 → 小腸 → 大腸 → こう門

Q2だ液を入れた試験管と、水を入れた試験管に、同じでんぷん液を入れて約40℃にしました。10分後にヨウ素液を入れると、青むらさき色になったのはどちら?

答え水を入れた方。だ液を入れた方は、でんぷんが別のものに変わったので、色が変わらない。

Q3試験管を約40℃にするのはなぜ?

答え体温に近い温度にして、だ液がよくはたらくようにするため。

Q4水を入れた試験管も用意するのはなぜ?

答えだ液がないと、でんぷんが変わらないことを確かめるため。だ液のあり・なしだけをちがえて比べる。

Q5養分が、おもに吸収されるのはどこ?

答え小腸

★2 標準

★2 標準 ― 消化液と、吸収の道すじ

塾で習う標準の範囲です。中学2年の理科とほぼ同じ内容で、多くの学校の入試はここまでで解けます。

消化液 つくる所 → 出る所 ふくまれる消化酵素 はたらき(何を何に)
だ液 だ液せん → 口 アミラーゼ でんぷん → 麦芽糖
胃液 胃 → 胃 ペプシン たんぱく質 → ペプトン(塾での呼び名)。塩酸をふくむ強い酸性で、細菌を殺す(塩酸は消化酵素ではない)
胆汁 肝臓でつくり、胆のうにためる → 十二指腸 ふくまない しぼうを細かいつぶにして、消化を助ける
すい液 すい臓 → 十二指腸 アミラーゼ・トリプシン・リパーゼ でんぷん・たんぱく質・しぼうの3つすべてを消化する(弱アルカリ性で、胃の酸を打ち消す)
腸液(小腸のかべ) 小腸 マルターゼ など 麦芽糖 → ブドウ糖、ペプトン → アミノ酸(仕上げ)

覚え方:消化液は5つ(だ液・胃液・胆汁・すい液・腸液)。「すい液は3つ全部」「胆汁は酵素なし」の2つの例外を先に覚えると、表がすぐ書けます。

最後にできる物(ここが最重要)

養分 最後にできる物 吸収されたあとの道
でんぷん ブドウ糖 柔毛の毛細血管 → 門脈 → 肝臓
たんぱく質 アミノ酸 柔毛の毛細血管 → 門脈 → 肝臓
しぼう 脂肪酸とモノグリセリド 柔毛の中でしぼうにもどる → リンパ管 → 首のつけ根で血液に合流(門脈を通らないので、はじめに肝臓を通らない)

吸収のしくみと肝臓

  • 小腸の内側のひだには、柔毛(長さ1 mmくらい)がびっしりある。表面積を大きくして、効率よく吸収する。
  • 柔毛の中には、毛細血管とリンパ管の両方が通っている。
  • 食後、養分がいちばん多くふくまれるのは、小腸から肝臓へ向かう門脈(肝門脈)の血液。
  • 肝臓のはたらき:①ブドウ糖をグリコーゲンにしてたくわえ、必要なときに送り出す ②胆汁をつくる ③アンモニアを尿素に変える ④有害なものを無害にする。
  • 肝臓は、人の体でいちばん大きな内臓(大人で約1.2〜1.5 kg)。肝臓・胆のう・すい臓は、食べ物が通らない。

確認問題 問題を押すと、答えが出ます。

Q1胆汁をつくる器官と、ためておく器官は?

答えつくるのは肝臓、ためておくのは胆のう。

Q2消化酵素をふくまない消化液は? そのはたらきは?

答え胆汁。しぼうを細かいつぶにして、消化されやすくする。

Q3でんぷん・たんぱく質・しぼうの3つすべてを消化する消化液は?

答えすい液

Q4たんぱく質が、最後に分解されてできる物は?

答えアミノ酸

Q5脂肪酸とモノグリセリドは、柔毛の何という管に入る?

答えリンパ管(柔毛の中で、しぼうにもどってから入る)

Q6食後、養分がいちばん多くふくまれている血管は?

答え門脈(小腸から肝臓へ向かう血管)

★3 難関〜最難関

★3 難関〜最難関 ― 実験の読み方と「なぜ」

最難関校で差がつくのは、計算よりも「実験の結果から、何が言えて、何が言えないか」です。まず実験室で、試験管を3本まで並べて確かめましょう。

実験室 1

だ液の実験室

3本の試験管(しけんかん)に、同じでんぷん液(ごはんをすりつぶした上ずみ液)が入っている。1本ずつ条件を決めて「実験スタート」をおそう。結果から何が言えて、何が言えないかを考えるのが、入試で一番差がつくところ。

お手本の組

試験管A

20℃・0分

試験管B

20℃・0分

試験管C

20℃・0分

条件を変える試験管

試験管Aの条件
  1. 1. はじめの温度で10分
  2. 2. 冷ます/加熱する
  3. 3. 試薬を入れる

ここでは入試の答え方に合わせて、だ液は「働く」か「働かない」かの2つで考える。ヨウ素液のもとの色は、学校によって「茶色」「黄色」と書き方がちがう。

実験の読み方 ― 6つのポイント

  1. 1 冷やしただ液は、40℃にもどすと働く。熱しただ液は、40℃にもどしても働かない(消化酵素はたんぱく質でできていて、熱で形が変わるため)。
  2. 2 熱いままヨウ素液を入れると、でんぷんがあっても青むらさき色が出ない。冷ましてから調べる。
  3. 3 ヨウ素液だけで言えるのは「でんぷんが別のものに変わった」まで。糖ができたことは、ベネジクト液を入れて加熱し、赤かっ色のしずみが出ることで確かめる。
  4. 4 比べる2本は、条件を1つだけちがえる(対照実験)。2つ以上ちがうと、どれが原因か決められない。
  5. 5 どちらも「色が変わらない」なら、どちらがよく働いたかは言えない。
  6. 6 温度を下げると、反応はおそくなる。でも時間をかければ、最後にできる量は同じ。酵素を2倍にしても、できる量は2倍にならない(でんぷんの量で決まる)。

実験室 2

柔毛(じゅうもう)の表面積を計算しよう

小腸の内側には「ひだ」があり、ひだの表面には柔毛がびっしり生えていて、柔毛の表面には、さらに細かい微柔毛(びじゅうもう)がある。表面積(ひょうめんせき)が何倍に広がるかを、自分の手で計算してみよう。

値の組

mm
mm
本
倍
倍
m
小腸の直径2.5 cm(決まった値)

小腸の内側の面積

30.3m²

たたみ(1.62 m²)18.7枚分

テニスコート0.12面分

テニスコートは、ダブルスのラインの内側 23.77 m × 10.97 m ≒ 260.8 m²。

倍率は「かけ算」でふえる

  • 筒の内側1倍
  • × ひだ 1.571.57倍
  • × 柔毛 6.5010.2倍
  • × 微柔毛 13133倍

ひだ 1.57 × 柔毛 6.50 × 微柔毛 13 ≒ 133倍

たし算だと 21.07倍 にしかならない。ひだで広がった面の上に柔毛が生え、その表面に微柔毛がある。広がった面がさらに広がるので、かけ算になる。

計算の道すじ(円周率は3.14)

  1. 柔毛1本の側面(そくめん): 2 × 3.14 × 半径 0.05 mm × 高さ 0.7 mm = 0.2198 mm²
  2. 1本が受け持つ壁: 1 mm² に 25本なので、1 ÷ 25 = 0.04 mm²(1辺 約0.2 mm の正方形)
  3. 柔毛の倍率: 1 + 0.2198 ÷ 0.04 ≒ 6.50倍
  4. 筒の内側: 3.14 × 直径 2.5 cm × 長さ 291 cm = 2,284.35 cm² = 0.228435 m²
  5. 全体: 0.228435 m² × ひだ 1.57 × 柔毛 6.50 × 微柔毛 13 ≒ 30.3 m²

「≒」は、数を丸めた(四捨五入した)しるし。

単位をそろえる

30.3 m² = 303,000 cm² = 30,300,000 mm²

1 m = 100 cm = 1,000 mm。面積は、たてとよこの2回かけるので、1 m² = 10,000 cm² = 1,000,000 mm²。

上面は差し引きゼロ

hr上面(+)ふえるのは側面だけ立っている所(−)1本の受け持ち
円柱(えんちゅう)の上面は、立っている所(底面)と同じ面積。ふえた分と、かくれた分が同じなので差し引きゼロ。だから、ふえるのは側面 2 × 3.14 × 半径 × 高さ だけ。

教科書は約200 m²(教室3個分)、2014年の計算し直しでは約30 m²。入試では教科書の値で答える。

面積の単位を変換する(m²・ha・坪など)

体長と消化管の長さ

草食動物の多くは、体長にくらべて消化管が長い。植物はかたいせんいがあって消化しにくいので、長い時間をかけて消化・吸収するため。肉の主成分のたんぱく質は消化しやすいので、肉食動物の消化管は短い。

動物 食べ物 消化管の長さ ÷ 体長
ヒツジ・ヤギ 草 約25倍
ウシ 草 約20〜25倍
ウマ 草 約10〜12倍
ヒト いろいろ 約5倍
ライオン 肉 約2〜4倍
  • 値は、資料によってかなりちがいます(体長の測り方や、消化管全体か腸だけかで変わる)。入試では、問題の表やグラフの値を使って計算します。
  • 「消化管の長さそのもの」と「体長の何倍か」では、順位が入れかわることがあります。体の大きい動物は、長さそのものは長くなりやすいからです。
  • ウシの4つの胃:第1胃では、微生物が草のせんいを分解する(大人のウシでは胃全体の約80%)。胃液を出すのは第4胃だけ。ふえた微生物も、最後はウシが消化・吸収する。
  • ウサギやコアラは盲腸が大きく、そこに植物のせんいを分解する微生物がすむ。パンダは、草食なのに消化管が短いという例外もある。

差がつく「なぜ」

›小腸は、なぜ長く、内側に柔毛があるの?

吸収は壁の表面でしか起きないから。表面積を大きくし、食べ物が通る時間も長くして、養分を取りこぼさずに吸収するため。

›胆汁は消化酵素がないのに、なぜ消化液と呼ぶの?

しぼうを細かいつぶにして表面積を大きくし、すい液のリパーゼがはたらきやすくするから。自分では分解しないが、消化を助ける。

›でんぷんは、なぜ分解しないと吸収できないの?

でんぷんはブドウ糖がたくさんつながった大きなつぶで、小腸の壁を通れないから。セロハンの膜を使った実験では、でんぷんは通らず、分解されてできた糖は通る。

›すい液にも、なぜアミラーゼがあるの?

だ液のアミラーゼは、胃の酸性の中で働かなくなる。消化しきれなかったでんぷんを、十二指腸ですい液がもう一度消化できるから。

›胃は、なぜ自分自身を消化しないの?

胃の内側が粘液でおおわれていて、塩酸やペプシンから守られているから。(くわしく:ペプシンは働かない形で出され、胃の中で塩酸に出会ってから働く形になる。)

›消化管の中は、なぜ「体の外」と考えるの?

口からこう門までは一本の管で、外とつながっているから。管の中のものは、まだ体に入っていない。消化管のかべから吸収されて血液やリンパ管に入ったとき、はじめて体の中に入る。

›草食動物の消化管は、なぜ長いの?

植物はかたいせんい(細胞の壁)があって消化しにくく、養分も少ないので、たくさん食べて長い時間をかけて消化・吸収するため。

›よくかむと、なぜ消化によいの?

食べ物が細かくなって表面積がふえ、だ液や消化液とふれやすく、まざりやすくなるから。

確認問題 問題を押すと、答えが出ます。

Q1だ液とでんぷん液を80℃で10分おいてから40℃にもどし、さらに10分おきました。冷ましてからヨウ素液を入れると何色? 理由も答えましょう。

答え青むらさき色。高温で一度働かなくなっただ液は、40℃にもどしても働かないので、でんぷんが残る。

Q2だ液とでんぷん液を80℃のまま10分おき、熱いうちにヨウ素液を入れたら、色が出ませんでした。「でんぷんが分解された」と言えますか?

答え言えない。熱いと、でんぷんがあってもヨウ素液の色が出ないから。冷ましてから調べ直す必要がある。

Q3試験管Aはだ液とでんぷん液を40℃、試験管Bは水とでんぷん液を0℃にしました。AとBを比べて、だ液のはたらきが分かりますか?

答え分からない。だ液のあり・なしと温度の2つがちがうので、どちらが原因か決められない。

Q4柔毛を、直径0.1 mm・高さ0.7 mmの円柱とし、壁1 mm²あたり25本生えているとします。柔毛があると、壁の面積は何倍になりますか?(円周率は3.14。ふえるのは円柱の側面だけ)

答え約6.5倍。1本の側面は 3.14 × 0.1 × 0.7 = 0.2198 mm²。25本で 0.2198 × 25 = 約5.5 mm² ふえるので、(1 + 5.5) ÷ 1 = 約6.5倍。

Q51日に、飲食で約2.5 L、消化液で約7 Lの水が小腸に入ります。大腸に届くのは約1.5 L、便に出るのは約0.1 Lです。小腸と大腸で吸収される水は、それぞれ約何Lですか?

答え小腸:9.5 − 1.5 = 約8 L。大腸:1.5 − 0.1 = 約1.4 L。水の8割以上は小腸で吸収される。

入試ではこう書く/実は

テストでは、左の「入試の書き方」で答えましょう。右は、なぜ数字や言い方がちがうのかを知っておくと、最難関の問題で役に立つ話です。

ことがら 入試ではこう書く 実は
小腸の長さ 約6〜7 m 6〜7 mは、亡くなった後に筋肉がゆるんだ長さ。生きている体では、測り方によって約3〜5 m。
消化管全体の長さ 体長の約5倍 生きている体では、口からこう門まで約5 m。
小腸の内側の面積 約200 m²(教室3個分)・テニスコート1面分 2014年に、これまでのデータから計算し直した値は約30 m²(たたみ約18枚分)。教科書の値は今も約200 m²。
水を吸収する場所 大腸は水分を吸収する 水の8割以上は、すでに小腸で吸収される。大腸は残りの仕上げ。
だ液でできる物 麦芽糖 麦芽糖のほか、ブドウ糖が3つつながった物や短い鎖もできる(中学の教科書は「麦芽糖など」)。
腸液 腸液にマルターゼなどがふくまれる 仕上げの酵素の多くは、柔毛の表面の膜についたままはたらく(液としては出ない)。
胃とたんぱく質 たんぱく質 → ペプトン ペプシンは、たんぱく質を短い鎖に切りはじめるだけ。仕上げは小腸。
しぼうの消化 十二指腸から(すい液のリパーゼ) 胃にもリパーゼがあり、しぼうの一部は胃で分解されはじめる。
しぼうの吸収 脂肪酸とモノグリセリド → リンパ管 長い脂肪酸はその通り。短い・中くらいの長さの脂肪酸は、毛細血管から門脈へ入る。
だ液と胃 胃は酸性なので、だ液は働かない 飲みこんだかたまりの中では、酸がしみこむまでしばらく働く。急に止まるのではなく、だんだん弱まる。
腸内細菌の数 (昔の説)100兆個・人の細胞の10倍 計算し直した値は約38兆個(体重70 kgの男性)。人の細胞の数(約30兆)と同じくらい。
食べてから出るまで 1〜3日 研究の平均は23〜37時間(約1日〜1日半)。人や食事によって大きくちがう。

書き方がちがう言葉

学校や塾によって書き方がちがいますが、どれも同じものです。

  • 胆汁 / たん汁 / たん液 / たんじゅう
  • 門脈 / 肝門脈
  • 柔毛 / じゅう毛(医学では「絨毛」と書く)
  • 肝臓 / かん臓、胆のう / たんのう、すい臓 / 膵臓、こう門 / 肛門
  • 脂肪酸とモノグリセリド(今の標準。古い教材や一部の学校では「脂肪酸とグリセリン」も正解にすることがある)
  • ベネジクト液 / フェーリング液(どちらも、加熱して糖を調べる液)
  • 十二指腸:通り道の順に入れる学校と、入れない学校がある(十二指腸は小腸の始まり)

よくある間違いトップ10

  1. 1 まちがい:胆汁は胆のうでつくる 正しくは:胆汁は肝臓でつくり、胆のうはためておく
  2. 2 まちがい:胆汁がしぼうを分解する 正しくは:胆汁は消化酵素をふくまない。しぼうを細かいつぶにするだけ
  3. 3 まちがい:だ液で、でんぷんがブドウ糖になる 正しくは:だ液では麦芽糖まで。ブドウ糖になるのは小腸
  4. 4 まちがい:胃で、たんぱく質がアミノ酸になる 正しくは:胃ではペプトンまで。アミノ酸になるのは小腸
  5. 5 まちがい:ヨウ素液の色が変わらない = だ液が働かなかった 正しくは:逆。色が変わらない = でんぷんがない = だ液が働いた
  6. 6 まちがい:脂肪酸とモノグリセリドは毛細血管に入る 正しくは:リンパ管に入る(柔毛の中でしぼうにもどってから)
  7. 7 まちがい:冷やしても熱しても、だ液はもどらない 正しくは:冷やした方は、40℃にもどすと働く。熱した方はもどらない
  8. 8 まちがい:柔毛の記述で「表面積」を書かない 正しくは:「表面積を大きくして、効率よく吸収する」まで書く
  9. 9 まちがい:肝臓・胆のう・すい臓を、食べ物の通り道に入れる 正しくは:この3つは、食べ物が通らない
  10. 10 まちがい:尿素は腎臓でつくる 正しくは:尿素は肝臓でつくり、腎臓でこし出す

おまけ:旅の記録 ― 器官ごとの長さ・時間・pH・細菌の数

健康な大人の目安です。人や食事によって大きく変わります。入試で数字を問われることは、ほとんどありません。

場所 長さ とどまる時間 pH 細菌の数(1 mL あたり) ここで起きること
口 ― かんでいる間(この映像では数十秒) だ液 約7(6〜7.5) ― 歯ですりつぶし、だ液とまぜる。だ液のアミラーゼが、でんぷんを切りはじめる。だ液は1日に約1〜1.5 L(人や状態で0.5〜1.5 L)。
食道 約25 cm(前歯から胃の入口まで約40 cm) 約8〜10秒 ― ― 筋肉の輪が順に縮む「ぜん動」で胃へ送る。波の速さは毎秒2〜5 cm。
胃 袋(中身 約0.25〜0.9 L) ごはんと卵の食事で、半分が出るまで約70分(45〜108分)。4時間後の残りは約1% 空腹時 1.0〜2.5。胃の中身は、食後に一時 6.7 まで上がり、2時間以内にもどる 10³〜10⁴ 塩酸とペプシンで、たんぱく質を分解しはじめる。おもに出口側で1分に約3回縮んですりつぶし、おもに1〜2 mm 以下になったものから十二指腸へ送る。
十二指腸 25〜30 cm 小腸全体で約4時間(2〜6時間) 約6 10³〜10⁴ 胆汁(1日約0.75 L)がしぼうを細かいつぶにし、すい液が胃の酸を打ち消す。すい液の酵素が、3つの養分の分解を進める。
小腸(十二指腸の先) 生きた体で約3 m(手術中に伸ばして約4.6 m、亡くなった後に約6.3 m) (小腸全体で約4時間) 6.6 → 小腸の終わりで7.5 10³〜10⁴ → 終わりで10⁸ 養分の大部分を吸収する。表面積は、2014年の計算し直しで約30 m²(柔毛で約6.5倍、細胞の表面の微柔毛でさらに約13倍)。教科書の値は約200 m²。ブドウ糖とアミノ酸は毛細血管から肝臓へ、しぼうはリンパ管へ。
大腸 約1.9 m(直腸をふくむ・CT で測定) 約1日(研究の平均16〜29時間) 入口(盲腸)5.7〜6.4 → 出口側 約7.0 約10¹¹ 数十兆の腸内細菌が、食物せんいの一部を分解する。水を吸い取り、届いた約1.5 L のうち便に残るのは約0.1 L。
直腸 12〜15 cm 便意が来るまで 6.7〜7.0 約10¹¹ 便をためて、こう門から外へ出す。
口からこう門まで ― 研究の平均 23〜37時間(約1日〜1日半)。人や食事によって大きくちがう

1日の水の出入り

消化管には、飲んだり食べたりした水に、だ液・胃液・胆汁・すい液などの消化液が加わって、1日に約9 L が流れこみます。その8割以上は小腸で、残りの多くは大腸で、体にもどります。

消化管に入る(飲食 約2 L + 消化液 約7 L) 9 L
大腸に届く 1.5 L
便に残る 0.1 L

おまけ:旅に出た鮭おにぎり1個の中身

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の値から組み立てました。ごはん100 g は、食事バランスガイドの「おにぎり1個」の目安。鮭とのりの量は目安です。

食品(食品番号) 重さ kcal kJ 水分 たんぱく質 脂質 炭水化物 食物繊維 食塩
おにぎり(塩むすび) (01111) 100 g 170 723 57.0 g 2.7 g 0.30 g 39.7 g 0.40 g 0.50 g
しろさけ 焼き (10136) 10 g 16 67.5 6.4 g 2.9 g 0.51 g 0.0 g 0.00 g 0.02 g
焼きのり (09004) 1 g 3.0 12.4 0.0 g 0.4 g 0.04 g 0.0 g 0.36 g 0.01 g
鮭おにぎり1個 111 g 189 803 63.4 g 6.0 g 0.85 g 39.7 g 0.76 g 0.53 g
  • 成分表の kcal は、体で消化・吸収されない分を、もう差し引いた値です。
  • 成分表の kJ は kcal × 4.184 ではなく、成分ごとの係数で別々に計算されています。そのため 189 kcal に対して 803 kJ(比は約4.25)になります。単位として 189 kcal をジュールに直すと約791 kJ です(1 kcal = 4.184 kJ)。
  • 炭水化物は利用可能炭水化物(単糖当量)。成分表では魚のエネルギーを差引き法の炭水化物で計算しますが、鮭に実際にふくまれる炭水化物は100 g あたり0.1 g です。
  • ごはんの食物繊維は塩むすび(01111)の値で、古い分析法によるものです。新しい分析法の精白米めし(01088)では100 g あたり1.5 g。

よくある質問

›中学受験で「消化と吸収」は、どこまで覚えればいい?

多くの学校は、★2(消化液・消化酵素・最後にできる物・吸収の道すじ・肝臓のはたらき)までで解けます。難関校・最難関校では、だ液の実験の読み方(冷やす・熱してから40℃にもどす実験、対照実験、熱いとヨウ素液の色が出ないこと)や、「なぜ」を説明する記述が出ます。

›胆汁は、どこでつくられる?

肝臓でつくられ、胆のうにためられてから、十二指腸に出ます。胆汁は消化酵素をふくみませんが、しぼうを細かいつぶにして、消化を助けます。

›でんぷん・たんぱく質・しぼうは、最後に何になる?

でんぷんはブドウ糖、たんぱく質はアミノ酸、しぼうは脂肪酸とモノグリセリドになり、小腸の柔毛から吸収されます。ブドウ糖とアミノ酸は毛細血管へ、脂肪酸とモノグリセリドは柔毛の中でしぼうにもどってリンパ管へ入ります。

›小腸の長さは何m?

入試では約6〜7 mと答えます。これは亡くなった後に筋肉がゆるんだ長さで、生きている体では、測り方によって約3〜5 mです。

›小腸の内側の面積は、テニスコート1面分?

教科書では約200 m²(教室3個分)とされ、入試ではこの値を使います。2014年に、これまでのデータから計算し直した研究では約30 m²(たたみ約18枚分)でした。

›食べてから便として出るまで、何時間かかる?

健康な大人の研究の平均で23〜37時間(約1日〜1日半)です。人や食事によって大きく変わります。入試で時間を問われることは、ほとんどありません。

出典

入試の答え方は、文部科学省の学習指導要領と教科書、塾の標準の教材、各校の入試問題(公開されているもの)で確かめました。確認問題はすべてオリジナルです。数値は下の文献によります。

  1. 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第6学年 B(1) 人の体のつくりと働き
  2. 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第2分野 (3) 生物の体のつくりと働き
  3. 令和6年度 小学校6年 理科 教科書の編修趣意書(東京書籍・大日本図書・学校図書・教育出版・信州教育出版社・啓林館。文部科学省の掲載資料。リンクは学校図書)
  4. 学校図書「中学校科学2」(令和7年度)— 柔毛・小腸の面積 約200 m²・脂肪の吸収・水の吸収
  5. 教育出版「自然の探究 中学理科2」編修趣意書 — デンプンは麦芽糖などに分解される
  6. 安居光國「脂質は体内で消化されると、脂肪酸とグリセリンになるの?」RikaTan 2018年6月号(教科書の「モノグリセリド」への変更)
  7. Helander HF, Fändriks L. Surface area of the digestive tract – revisited. Scand J Gastroenterol 2014;49:681–689
  8. Teitelbaum EN, et al. Intraoperative small bowel length measurements and analysis of demographic predictors of increased length. Clin Anat 2013;26:827–832
  9. Hosseinpour M, Behdad A. Evaluation of small bowel measurement in alive patients. Surg Radiol Anat 2008;30:653–655
  10. OpenStax. Anatomy and Physiology 2e, 23.5 The Small and Large Intestines(柔毛の大きさ・小腸の消化酵素は微柔毛の膜につく)
  11. Kiela PR, Ghishan FK. Physiology of intestinal absorption and secretion. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2016;30:145–159(水の大部分は小腸で吸収)
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  13. Habel RE. The Anatomy of the Domestic Animals, 5th ed. 1975(BioNumbers 112407: 腸の長さはウシで体長の約20倍、ヒツジ・ヤギで約25倍)
  14. 農畜産業振興機構「なぜ、牛の胃は4つもあるの?」
  15. コトバンク「ペプシン」(ペプシノーゲンが胃酸で働く形になる)
  16. コトバンク「ヨウ素デンプン反応」(加熱すると色が消える)
  17. Non-Pancreatic Digestive Enzymes(総説)Biomolecules 2025(ペプシン・胃リパーゼ・小腸の膜の酵素)
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  34. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(01111 おにぎり・10136 しろさけ 焼き・09004 焼きのり)
  35. 農林水産省「食事バランスガイド」(主食: おにぎり1個 = ごはん100 g)
  36. NIST SP 811 — Guide for the Use of the International System of Units (1 kcal = 4.184 kJ)

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